鬼滅の刃はなぜ社会現象になったのか?【人気の理由】

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「鬼滅の刃」は、劇場版の興業収入は国内最高の403億円を記録し、漫画の総売上は1億5千万部を超えるなど(電子書籍含む)社会現象を巻き起こしました。 ブームになってから2年以上経って流石に話題にされることも少なくなってきましたが、あれだけ異常な売り上げを記録した理由は何故だったのだろうかと思う人も多いでしょう。

そこで今回は、鬼滅の刃があれだけ流行った理由を、時期や環境などの外的要因と作品の質にあたる内的要因に分けて考えてみました。

この記事には、鬼滅の刃ネタバレが多分に含まれています。

目次
  1. 社会現象となった環境・時期的な理由・急速に流行が終わった理由・例
  2. これほどまでに流行った作品の質的な理由、社会現象が急速に終わった理由・例
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社会現象となった環境・時期的な理由・急速に流行が終わった理由・例

 

理由1.一般層・有名人が流行りに乗っかったため「バズッて」社会現象になった

2019年の秋から冬ごろにかけて報道番組でも多く取り上げられ、その流行りに乗っかった一般層も多くいました。なにかしらのランキング1位やトレンド入りをしたという情報が途切れることなく続き、それが一般層に伝わり始めたのもこの時期です。

短期間の内に一般層に届いた情報量は、ワンピースや進撃の巨人がブームになった時よりも格段に多かったように感じます。

アニメ放送開始時点の累計発行部数は約350万部でしたが、アニメ放送終了直後には1200万部になっていました。凄い上昇率ですが、この時点での発行部数としては他の人気作品と比べて驚異的というほどではありません。

しかし、アニメが放送された年の秋頃から年末にかけて一般層のファンを獲得すると2500万部(2019年末)と更に倍に増え、2020年2月に4000万部に達しても売り上げが落ちることはなく、2020年10月には1億部を超えています。12月には最終巻が発売された後も売れ続け、ついに1億5千万部に達しました。 一般層が流入してからの約1年間で1億部近くの増加は、他の人気作にはなかった短期間での急激な上昇です。

「ワンピース」や「進撃の巨人」などある程度時間をかけて社会現象となった作品との違いは、SNS・動画サイトでの拡散が大きな役割を果たしたことです。 いわゆる「バズり」と同じ状況で連鎖していき、その影響から2~3ヶ月の間にテレビでも話題にされるようになりました。

SNS・TVなどで有名人が当然のように鬼滅の刃のことを口にし、LISAが紅白への出場を果たしたことも連鎖を長期化させた要因の一つでしょう。

メディアでも記録的な売り上げやコラボ情報、連載終了、劇場版公開、最終巻発売と、途切れることなく話題を提供され続けました。そうして与えられた話題を元にまたSNSでバズり、それがまたニュースになるという連鎖が続いていましたね。

メディアミックスやコラボの企画は今でも続いています。 短期間のブームで終わらず未だに関心を持たれているのは、後述する他の外的要因や内的要因と組合わさったり連鎖したからだと考えています。

理由2.サブスクなどの配信環境が整い社会現象になった

鬼滅の刃は、アニメの1クール目から期待されていた人気作でしたが、2クール目からは更に人気が上がりました。3ヶ月分くらいの放送が終わった後でアニメの人気が上がっていったのは、サブスクなどで後追い視聴をした人が多かったからと考えられます。 実際、多くの動画配信サービスでも長い間ランキングの上位にとどまっていました。

理由3.コロナ禍の巣籠もり需要や、映画の公開時期も売り上げを増加させ社会現象になった

コロナ禍の巣籠もり需要で、原作漫画とネット配信が盛況となったのも要因の一つでしょう。 映画公開日はコロナの第2波が収まりかけたあたりでしたし、第3波が来る前に動員数を稼げたのも大きかったと思います。 また、ライバルに成り得た大作がコロナ禍のため公開されず、その影響で上映館数を増やせ動員数を稼ぐことができました。

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理由4.ヒット作のすき間需要があり社会現象になった

社会現象になるには一般層の取り込みが必須です。そうした普段漫画を読まない層にも訴求力があり、かつ映画化や最新刊の発売などの展開が続いていく作品は、鬼滅の刃がブームになるまでの数年間出てきませんでした。

ワンピース・進撃の巨人は連載が長期化して新規ファンの増加も頭打ちでしたし、デス・ノートもとっくの昔に完結して過去の作品となっていました。劇場作品のジブリ品や「君の名は」や「アナと雪の女王」は2時間程度で視聴し終えて、その後の展開がありません。

鬼滅の刃の特大ヒットは、新しくて適度な長さのある娯楽作品を求めていた需要とマッチし、更に勢いがついていったのだと思います。

ブーム開始から一年経っても劇場作品が「千と千尋の神隠し」を超えるほどの動員数を記録したのは、 「ワンピース」や「進撃の巨人」よりも相対的に新しい作品が求められていたから、ということもありそうです。

理由5.最大公約数的にそこそこの支持を得る内容だったから、幅広い層にウケて社会現象になった

尖った内容の作品よりも「努力・友情・勝利」を表現した正統派の作品の方が平均点が高くなます。一部の人に100点満点をつけられる内容よりも、多くの人に70点をつけられる内容の方が幅広い層に薦めることができますよね。

それに、チャンバラ復讐劇は昔から人気のジャンルですから、高齢層にも受け入れられやすかったのでしょう。

理由6.アニメ化の時期や制作スタジオにも恵まれ社会現象になった

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単行本の巻数が20巻以下(放送当時)で、物語が佳境に入った時期にアニメ化されたのも幸運でした。

新規ファンからすれば、結末を長々と待たされない事と、多くの巻数を買わなくて済む事が確定していた訳です。ワンピース・ナルト・ブリーチなどは50巻以上出ています。それらの作品よりお金や収納場所の負担が少なくて済み、終盤までの単行本を一気に揃えられるというのは大きな魅力です。

そしてアニメの制作スタジオ・ufotable(ユーフォーテーブル)がハイクウォリティな作画・原作描写の補完・ド派手な演出をしてくれたのが、大ヒットのきっかけになったことは言うまでもありません。

しかしクオリティの高いアニメ化をしても、社会現象にはならなかった作品はいくつもあります。そうした作品と鬼滅の刃との違いは、上述してきた外的要因だけなく下記の内的要因もあると考えています。

これほどまでに流行った作品の質的な理由、社会現象が急速に終わった理由・例

理由1.テンポ良くサクサク進み、派手なバトルを定期的に挟んだため流行った

鬼滅の刃の原作コミックは、最近のヒット作にしては巻数が少なく(全23巻)、テンポ良く展開していくのでサクサク読めます。

序盤の4巻で主人公達と敵側の幹部に当たる十二鬼月(下弦の伍)との戦いが始まり、8巻では剣士最高位の柱と鬼最高位の上弦との戦いが描かれました。そして、16巻から最終戦が始まるという内容の濃さです。

他にも、序盤から終盤まで定期的に派手な戦闘を挟んでおり、緊張感を保ったまま読者を飽きさせませんでした。 冗長さを感じさせない構成になっているので、一般層にも受け入れられたのだと思います。

理由2.定期的にカタルシス味わえ、終わりがハッキリしている構成のおかげで流行った

鬼滅の刃の物語は、「~編」と呼ばれる5つのまとまりで構成されており、各編を読んだ後に不完全燃焼感を殆ど残しません。敵を倒して舞台が移ると、前の舞台では共闘しなかった仲間(柱)が登場し、新しい鬼(十二鬼月)と戦います。そして、主人公が徐々に柱に認められ親交を深めていく、という定型で進行しています。

最終決戦を除けば短い巻数でまとまった内容を楽しめるので、忙しい現代人に向いている形式となっています。そして、 一つのまとまった話の最後に必ずカタルシスを味わえる展開も、読者を引き付けた大きな要因です。

散々描写されてきた陰鬱・残酷な表現がバネのような蓄積となり、敵を倒す際に一気に解放されて多大なカタルシスを与えています。

理由3.ヒット作品の定形を効率よく使い、過程を大幅に省いているから流行った

「規格外の緑壱の呼吸を真似れば、無惨撃破の決め手になる・記憶の遺伝など(主人公が考えついたり調べたりする必要がなくなる)」「匂いで感情が分かる(相手の心理を読み取る描写の削除)」「柱や十二鬼月など圧倒的な力を持つ集団を、他作品よりも早い時期に投入する(バトル漫画の一番美味しい部分を序盤に持ってくる)」など、ヒットしたジャンプ漫画の展開・設定をより効率的に用いたのも人気を高めた要因の一つです。

特に効果を上げているのは、「最初はあえて悪い印象を持たせて好感度を低くし、後に同情的な描写や考えを改めさせる短い描写を入れる。そうすることで印象に急激な反動がつけられ、その勢いで好感度を急上昇させる」というやり方です。

炭治郎とあまり絡んだことがなかった煉獄さんとも、最後はすごく親しい間柄だったかのように感じさせています。でも、車内で駅弁を食べていた頃までは、あらぬ方向を見て会話のキャッチボールが上手くできない変な人でしかありませんでした(それ以前に妹共々処刑されかかっている)。

柱は大体このパターンで、短期間の内に読者に親しまれる状態までもっていっています。これは他作品でも使い古された手法ですが、作中で使われたページ数・コマ数を考慮すると恐ろしい効率であることが分かると思います。

理由4.幅広い層に受け入れられやすい名称・技・人物の設定だから流行った

TVアニメ「鬼滅の刃」柱解禁PV

作中では、「鬼」や「刀」など、オタクではない人でもパッと理解できる言葉が多く使われています。 登場人物は和名で、「鬼殺隊」「鬼狩り」などの用語は予備知識なしで意味が通じるもので、この作品独自の名称の「~の呼吸」「全集中」なども親しみのある言葉を使っています。 その「~呼吸」「全集中」の技が、子供などが気軽にマネしやすい技だったのもウケた理由の一つでしょう。

活躍するのが子供や若者なので、少年が感情移入しやすかったということもありそうです。 鬼滅の刃はオタク臭さが少なく、子供から高齢層まで取り込めるような人物設定になっていると思います。

個性的な人物が多く登場する作品は他にも多くありますが、外見に関しては他作品よりも地味な剣士が多いです(恋柱や善逸という例外もいるが)。髪や肌の色が現実で見慣れていないカラフルなものばかりだったら、お年寄りなどの一般層は抵抗を示したかもしれません。ただ鬼はモンスターなので、そういうもんだと納得できるのでしょう。

性格やデザインの評価としても、縁壱と兄上は若い女性に人気・善逸は子供に人気というように、幅広い層に親しまれるキャラクター達を生み出しています。

また、ネット上では「隊士の格付けなどの設定を掘り下げなかったな」という感想をたまに聞きます。しかし、そういった予備知識が必要になりそうなものは、あまり掘り下げなくてよかったと思います。内容を理解するのに必要な専門用語が増えれば増えるほど、一般層が手を出しにくくなってしまいますから。

理由5.現実を一時忘れられる、良い意味でのトンデモ設定にしたから流行った

主人公達が強くなった理由付けに、少年漫画的トンデモ理論があります(主に呼吸関連)。 こうしたリアリティのない要素は揶揄されがちですが、一時現実を忘れるのに役立つ要素でもあります。

というよりも、バトルものの少年漫画に非日常感を求める人も多いですから、多少リアリティのない方が楽しめるのかもしれません。大正という時代設定も、現代とは離れた世界を感じるのに役立っているのでしょう。

理由6.ただ格好よく戦うだけでなく、感情移入できる・励まされるので流行った

作中での戦いの多くは困難極まるもので、主人公達がそれに立ち向かうような共感させる姿が描かれています。理不尽ともいえる状況の中で傷つく剣士達を見て、自分の辛い状況と重ねて応援したくなる人も多いでしょう。

特に炭治郎は、自身も苦しい立場であるにも拘わらず人を励まし続けるような少年で、鬼にすら同情してしまうほど心持ちが優しい性格です。炭治郎の言動を見て、まるで自分が励まされているような気にもなる人もいるようです。

無慈悲な鬼達にもそれぞれ背景があり、それが死の間際に走馬灯の形式で読者に伝えられるなどして、感情移入できるような描かれ方をしています。

共感しやすい登場人物達の描写、励まされているような気持ちになれる言動、単に戦うだけでなく敵味方それぞれにドラマがある、というのも支持された要因かもしれません。

理由7.陰鬱になりすぎないよう適度にコメディ描写を挟んでいるため流行った

鬼滅の刃は子供にも流行った作品にしては、残酷・陰鬱・猟奇的な表現が多くあります。 しかし、そういうシーンばかりが続けば読者を暗い気持ちにさせてしまいますから、コメディ描写をチョイチョイ挟んでバランスを調整しています。

最近のヒット作でよく見られる手法ですね。 ただし、いくらかシリアスの度合いを緩めはいますが、ポンポン人が死んでいく緊張感を維持できるようにメリハリをつけて調整してもいます。 そうした緩急の付け方が上手いので読み進めやすい、というのもポイントでしょう。

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